2026/08/12 09:00

今回は、とあるお客様からいただいたご質問から、「応用編」として以下の解説を試みたいと思います。

Q.商品説明などに記載がある「祈祷済み」とは、どういう意味ですか。

A.タイのお寺などで発行されるプラクルアンや仏像、パーヤン(布製のお守り)は、そのお寺の住職である僧侶等の加持祈祷を経て俗世に流通することとなります。この世に出回るための儀式を経ていることを私は「祈祷済み」として商品説明などに掲載しています。
 もう少し、この点について詳しく申し上げますと、こうした行為をタイ語で ปลุกเสก(Pluk Sek / プルック・セーク) と言います。日本語では「開眼」「加持祈祷」「魂入れ」などと訳されますが、単語を分解するとその正確なニュアンスがよく分かります。

つまり、単語の正確な意味と語源について申し上げますと、
ปลุก(プルック)=目覚めさせる、呼び醒ます、覚醒させる
เสก(セーク)=呪文・念を唱えて(霊力を)吹き込む、神聖なものに変じる となります。

 直訳しますと「目覚めさせて霊力を吹き込む」という意味になります。ただ呪文を唱えて祈祷する(セーク)だけでなく、「まだただの物質(金属や粉末など)として眠っているものに対し、瞑想や経典の念によって中に宿る神聖な力や魂を『呼び醒まして効力を発揮させる』」という、覚醒の概念が含まれているものと考えられます。ですので、私が言う「祈祷済み」「開眼済み」であり、「入魂済み」と思っていただいて良いと思います。

 さらに申し上げますと、複数の高僧で行う仏教開眼式は、プッターピセーク(พุทธาภิเษก / Buddhaphiseik)と呼ばれ、新しく作られた仏像やプラクルアンに仏性(ブッダのエネルギー)を宿らせる、きわめて厳格で神聖な儀式があります。単なる個人の祈祷とは異なり、複数の高僧や儀式専門の白衣の行者が集まり、綿密な準備と手順を経て夜を徹して行われることも少なくありません。

【儀式における主要な役割】
 プッターピセークは、僧侶と参列者が明確な役割分担のもとで連携して行います。
ナックプロック(พระนั่งปรก):座禅集中を行う高僧儀式の中心となる存在。
 徳が高く、深い瞑想(サムタ・ヴィパッサナー)の力を持つ高僧が招かれます。台座の上に座り、数時間〜一晩中、瞑想状態(禅定)に入って念を注ぎ込みます。
プラ・ジャルーンプラプッタモン(พระเจริญพระพุทธมนต์呪文・経典を唱する僧侶団)
 通常4名以上の僧侶で構成され、儀式の進行に合わせて『チャイヤモンコン・カタ(勝利の護呪)』や『パリット(魔除け経典)』などを途切れることなく読経し続けます。
モー・プラム(หมอพราหมณ์:ヒンドゥー・バラモン系の司祭)
 儀式の開始時に、天界の神々(デーヴァ)や土地の守護神を降臨させて儀式を見守ってもらうための招神儀式(พิธีบวงสรวง / ブアンスアン)を執り行います。
プラ・ケーチ・アージャン(พระเกจิอาจารย์)
 呪術やヤント(神聖図形)、サクヤンなどの知識に長けた名僧たち。それぞれが得意とするカタ(呪文)や念を用いて加持を行います。

【主な手順と儀式フロー】
 一般的に夕方から夜間、あるいは深夜にかけて執り行われます。
 1.準備:サイシン(聖糸)の張り巡らせ・・・儀式空間の聖域化
 本堂(ウボーソット)や会場の中央に仏像・プラクルアンを配置し、主仏像からすべてのお守り、そして参列する高僧たちの手元まで、一本の白い聖糸 「サイシン(สายสิญจน์)」 を途切れずに張り巡らせます。これにより、高僧から発せられる念や読経の波動がお守り全体へと伝達されるラインが形成されます。
 2.ブアンスアン(神々への神聖儀式)・・・神聖なエネルギーの招来
 バラモン司祭または高僧が、お供え物(花、果物、バイシーと呼ばれるバナナの葉の飾りなど)を前にして経を唱え、天界の神々や歴代の師父(ルーシーなど)に儀式の開始を報告し、降臨を乞います。
 3.チエンチャイ(勝利の燭台への点火)・・・儀式の正式な幕開け
 最高位の導師(または最も尊敬される高僧)が、特別に用意された大きなろうそく 「チエンチャイ(เทียนชัย)」 に火を点します。この点火をもって、プッターピセークが正式に始まります。
 4.プロック・セーク(高僧による座禅加持と絶え間ない読経)・・・念の注入と魂入れ
 「ナックプロック」と呼ばれる高僧たちが各方位の台座に座り、聖糸を手にして瞑想に入ります。僧侶団による経典の読経が会場に響き渡る中、高僧たちは何時間も集中を維持し、仏徳と自らの念を聖糸経由でお守りへ注ぎ込みます。
 5.ダップチエンチャイ(チエンチャイの消火)と聖水撒き・・・開眼の完了
 所定の時間が経過(または夜明けを迎える)した後、導師が「チエンチャイ」のろうそくの火を消します。この「消火」の瞬間がお守りに完全な効力が宿った合図とされます。その後、完成したプラクルアンや参列者に聖水(ナームモン)が撒かれます。

 ちなみにプッターピセークは、同じプラクルアンなどについて複数回行われることもあります。タイのコレクターの間でもプッターピセークへの関心は高く、そのプラクルアンや仏像の仏教開眼式にどのような高僧が参加したか、何回行われたかでその価値・価格に影響することがあります。

 実は、当店で出品しています「リアンロー プラピッカネート ルンルワイタンジャイ ルンレーク ワット・チャオアーム ヌアナワローハゲートンカム ガンマカーン 2561年(¥128,000)」は、本ブログ記事「2026.06.03付 仕入速報 ①」でも紹介しておりますとおり、錚々たる高僧が参加して盛大で厳かな祈祷式を経て開眼しております。その素材の希少性もさることながら、こうした高僧が多数参加した祈祷式を経ていることも、その価値に大きく影響していると私は考えています。

 ひとことで「祈祷」と言いましても、やはりタイ仏教の伝統儀式でもありますので、上記のような参加者による手続を経て誕生していることを知ることで、皆様のプラクルアンや仏像などへの思いも深まるものと信じております。

 以 上